「マネジメントと自立型社員の育成」(追手門大学副学長・秦敬治氏講話)




随分遅くなったが12月10日の中小企業家同友会松山支部12月例会の追手門大学副学長・秦敬治さんのお話について書いておこう。正直いったいどのようにまとめるべきか、頭を整理するのに時間がかかった。不十分な理解は理解なりに区切りをつけておかないと前に進めない気がした。

その日のお話のタイトルは「マネジメントと自立型社員の育成」。秦さんのお話の内容はきわめて明快で
「自立した社員とはいつ何があっても独立して食べていけるだけの強みや得意なこと、いわゆる専門性や能力を有していること。一つの例えが日産の社員がトヨタへ行ってもベンツへ行っても通用するようなもの。そうゆう社員なら辞めても食べていけるので、上司の顔色をうかがうことなく本音で仕事ができる。」
「理想の組織とは?ピラミッド型からフラット型、上位下達からチーム型への移行、メンバーの弱みを消して強みだけを結集する、これがマネジメント」
「日本型チームとアメリカ型チームの違い、アメリカだったら営業であっても同じチームなら経理にも技術にも口を出す。そもそもメンバー、同志とは?友達、同僚、上司・部下ではない、志を同じくする者だ」
「少年院に入る子供は『過干渉』か『放任』されてきたかのどちらか。『過保護』の子は少年院に入らない。組織型過保護こそ望ましいのだ。組織型過保護とは自分のやりたいこと、自分の得意なこと、自分の専門性を生かすようにはからってやることであり、組織型過干渉とは無計画な人事異動や行きたくない研修に行かせるようなことである。」

このあたりは中小企業家同友会の「人を活かす経営」にも相通ずる部分があり、非常に参考になった。西南学院大学の職員から愛媛大学の准教授、現在は追手門大学副学長へと次々とキャリアアップさせている秦さんのお話は説得力があり、普段は経営者ばかりでめったに見ることない学生も多く参加して愛媛大学で教鞭をとっておられたときはさぞ人気の講義だったのだろうなと思わせた。

しかしお話の内容には疑問符のつくものがないわけではなく、それは私が感じただけではないようで、後の時間の質疑応答の中で「日本の新卒一括採用を否定しておられたが、同友会では『理念の浸透』が何よりも大事であると考え、それには新卒一括採用が望ましいと考える」といった意見も出された。
私も秦さんの言われる「新卒一括採用は昔の見合いのように親が本人が知らない人を連れてきて無理やり結婚させて初夜を迎えるようなもの」ということも理解はできるのだが、新卒一括採用でない欧米の今の現状はかなり悲惨なように思える。若い人には経験もスキルもないので就職することができない、若い時に経験やスキルを得る方法はインターンシップに励むことなのだが、これはその期間無給で働けるだけの資力がないと無理なので親の援助を受けられる裕福な子弟でないと良い就職先を確保できないという、まさに能力主義を推し進めた結果、階級の固定化と格差の拡大を生んでいるのが欧米の現状なのだ。

むろん硬直した日本の状態は好ましいものではないが、やり方を間違えると困ったことになるのではと思ったが、色んなことを考えさせられた知的刺激に満ちた例会だった。(^◇^)