遅くなったが、10月23日(木)の2014年度全国広報情報化交流会in愛媛に参加した時のことを書いてみよう。私は第3分科会だったのでその時のことなど。ここの分科会のテーマは「エネルギーシフトと広報 エネルギーシフトで持続可能な社会を創ろう」 広報についての全国大会で何で今まではメジャーな問題ではなかったエネルギーというか環境なの?と当初は思ったが・・・
報告者はお二人でまずは地元の内子町の(有)内藤鋼業の社長の内藤昌典さん。
従来は製材所の刃や機械などを扱っていたのが、間伐材や製材の廃材を使っての木質ペレットの販売、ペレット製造機械の設置・販売を行っている。内子町自体がバイオマスタウン構想で廃木材の需要を積極的に推進してくれたという時代の流れとマッチして、社業も順調に拡大しているという。地元の山の木を切ってペレットを作り地元の施設で使う、そうなると雇用も地元で生まれるといった「地域内循環」ができる、重油や灯油を使うと結局お金は中東や欧米の石油メジャーに流れるだけ、といった同友会が推奨する「地産地消(商)」の考え方のまさにお手本といった例だった。何しろ木質ペレットは地元でしか消費できない、なぜならほかのエネルギーに比べると輸送コストが莫大にかかるからということである。
二人目の報告者は中小企業家同友会全国協議会の事務局長 平田美穂さんでまだまだ耳慣れない「エネルギーシフト」という用語について詳しく説明してくれ、ドイツ視察のこと、今後の同友会の取り組みについて説明してくれた。
「エネルギーシフト」とは簡略化していうと 1.徹底した省エネとエネルギーの有効利用に取り組み 2.再生エネルギーによる地域内自給をめざし 3.中小企業の仕事と雇用を生み出す 1~3を行うことににより持続可能で質の高い暮らしと仕事を総合的に地域全体で実現しようというものだそうだ。
各地で作られる条例の中に「エネルギー条項」を入れるよう働きかけたり、同友会内でエネルギーシフトのハンドブックを発行する予定だということである。
3つしかない分科会にあえて「エネルギーシフト」を入れたそのわけは、普通に考えると未曾有の災禍をもたらしいまだに収束の目途すらたたない福島の原発事故を念頭に置かれていると考えられる。日本のほとんどの経済団体が、「原発再稼働」を政府に要望している中、さすがに「脱原発」を掲げると政治的摩擦や反発があるのでそれを述べることはできないにしろ、消極的であるにしろ「脱原発」を標榜していると見られるのは何とも感慨深い。翌日のパネルディスカッションでも鎌田さんの昔の思い出で、愛媛では同友会は左翼団体扱いをされていた話が出ていたが、今や法制団体でもない中小企業家同友会の総会には知事や市長が出席し(来ない場合は名代を出し)、条例の中に明記されるというメインストリートに躍り出ているのである。自らの良心に従い信念を持って行動していけば必ず時代を動かすことができるのではと、期待をこめてそう思った。
2014年度全国広報情報化交流会in愛媛の二日目はパネルディスカッション。タイトルは「同友会の発信力は、『産・学・官・報』の連携が鍵~地域と対話する同友会づくり~」。
パネリストの印象に残った発言をピックアップしてみる。
鈴木孝裕氏(愛媛新聞社 編集局整理部副部長)
「若い時に同友会の担当になったとき、周囲の目は憐みや軽視、第二民商だからあんなものに近づくなと忠告されたりもした。しかし、どう調べても同友会と左翼団体とのつながりは見つからない。逆に本当に大切なもの(必要なものではない)は何かを大真面目に追及している、接していてすがすがしい気持ちにさせてくれる団体だった。
同友会とは密着するが癒着はしない。いいことはいい、ダメなことはダメといえる関係、これを維持しないと同友会を報道が貶めることになる、報道を育てるくらいの気概を持ってほしい、利用し利用される関係ではない。」
和田寿博氏(愛媛大学法文学部教授 愛媛同友会会員)
「大学人は経営者や事業活動自体を『悪』とみなしている。自分も同じであったが同友会と出会って(というか鎌田さんと出会って)変わった。この出会いがなければ、松山円卓会議の座長を務めたりすることはなかったであろう。
インターンシップや提供講座によって学生は中小企業の実態を理解し従来のイメージとは異なる企業や経営者を知ることとなる、大学もこのような講座は大変人気があるので大助かりだ。同友会も価値を高められるし、それを報道機関が記事にすることによって世間にアピールできてすべてが好循環になっている。」
三好寛太氏(松山市地域経済課中小企業支援担当)
「松山市としては、どうゆうビジョンで市を発展させていくか、個々はあっても全体としてはなかった。同友会言うところの『企業理念』のようなもの。これを市としても持つべきではないか。それに魂がこもってなければ発展はないのではないか。その大切さを同友会から学んだ。」
鎌田哲雄氏(愛媛同友会専務理事)
「同友会は自らを映す明澄な鏡である。鏡は時にくもることもあるので、磨いていかなければならない。他県の人からはどうやって三好さんや和田先生のような志の高い行政マンや大学教授を見つけたのか聞かれる。彼らは元々いたのだ。曇っていたら見えない。
同友会は価値を創造するのではない、人間本来が持っている価値を見出すルネッサンスのようなものだとこれは故宇高さんが言っていた言葉」
ディスカッションが終わると、各テーブルでグループ討論となったが、他県の方からは愛媛の取り組みに対して賛辞が送られ、それはそれで誇らしい気持ちだったけれど、これは鎌田さんの個人的な努力が大半であることを考えると無邪気に喜んでなどいられない。
全ての行事が終了し、他県の方々をお見送りしながら、改めて自己を問い続けるいい機会になったと感じた。