2019年6月17日(月)中小企業家同友会松山支部第三地区6月例会が番町公民館で行われ、松前町の食品会社、(株)昆布森の常務取締役、好永隆之さんの~倒産寸前の会社が再誕した「市場創造」とは ”値引きなし””モノマネなし”が自社の価値を高め未来を創る~ と題した報告があったのだが、その内容をレポートする。
写真は当日参加者に配られた(株)昆布森さんの商品の一部
好永さんは、今年の愛媛県中小企業家同友会総会の実行委員長をされ、私も実行委員の一人として、末席に加わったのだが、整然と会の準備を進めていく手腕と熱いハートを兼ね備えた人柄に私など大いに感銘を受けたもので、今回の報告も大変楽しみにしていた。
報告の時に参加者に配られた資料は回収されたので、断片的なものになっているのはご容赦を。
好永さんは大学卒業後、飲食会社に就職していたが3年後、社長である父親に帰ってきて欲しい、との相談を受け(株)昆布森に入社、これは経営の厳しい中小企業でよくある、融資の条件として金融機関ができるだけ保証人を増やさせる、まあ、体のいい人質である。
帰ってきて間もないころ会社は、正社員は全員退職し工場の中で作業していたのは、中国人やベトナム人の実習生といったありさまだった。
経営が悪化していた原因は売上の低迷にあったが、
1.市場調査等は一切しないので顧客が何を望んでいるのか分からない
2.自社の先入観だけで商品を投入する
3.その結果、受注が減っていった
4.対策としてコスト削減、リストラなどを行う
5.何か手を打とうとしても、人材もなし、設備も貧弱ということで手の施しようがない、
という負のスパイラルに陥っていた。
局面を打開しようとして県外の商談会に出品しようとした。
ブース代50万円、販売する者の交通費や宿泊代入れると100万円かかるが、以外とここで取引先を確保できた。
顧客が何を望み、どういった商品を作るべきかが分かった。
例えば従来は業務用で大箱のバルク出荷だった。
試食してもらうと「美味しんだけどそんなにいらないよ」と言われる。
小分けにした個包装の商品をお客さんは望んでいたのだった。
かつては業務用の商品が9割であったが、今は3割となった。
しかし、昔の取引先は20社であったのが、今は500社。
細かな対応はしないといけないが、得られる情報量が圧倒的に違う。
スーパー等の販売協力は派遣会社のマネキンを使う会社は多いがあくまでも自社従業員を使う。
かかるコストは大きいが複数店舗だと波及効果が凄い。
スーパー1店舗で個包装状態の食品は1日4パック売れればヒット商品である。
商品知識と自社愛が一杯の社員なら難なくクリアできる数字だ。
スーパーの店員も売れる商品を置きたいので、スーパーの他の店舗でも商品を扱ってくれるようになる。
そして売れると分かると小売店が自分でポップなど作り出す。
ポップは販売先には無料で提供しているが、小売店が長年の経験で作り出すポップも中々センスがよくこちらも勉強になる。
従業員にとっても、売ることの難しさや面白さを知ってもらうことで成長させることができ、社員教育の一つとなっている。
劣化コピーでいいから作ってくれとの依頼は多々ある。
それを作ることを信条のメーカーもある。
その方が商品開発の苦労がいらないから。
しかし、自社の価値を下げ、値下げ競争に巻き込まれるだけの、そのようなやり方は絶対に自分のところはしない。
昆布森は大手が扱うのがめんどうなワカメのめかぶを主に扱うことで、独自性を発揮してきた。
見積もりの下をくぐることが目的の値下げ合戦はやらない。
問屋の営業会議に販売担当者が出席させてもらうなど、従来のメーカーの旧習とは違うやり方をさせてもらっている。
見方によってはかなり偉そうだが、商社などが新製品の開発など提案してきても、「どこで売りたいのか」「誰に売りたいのか」明確な答えがないと、止めることにしている。
エンドユーザーを限定しないと売れるものも売れない、
一例をあげると東京の巣鴨、ここには高齢者しかいないのでまさに絶好のターゲットで、入れ食い状態だ。
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多くのグラフや数字を駆使しながらも、論旨が明快で分かりやすい報告であった。
一つ会の後で参加者の感想で多かったのが、
「経営理念」は社員を巻き込んで作るというのが、同友会の基本的な方針だが、それは理想ではあるが、昆布森ではそのやり方はしない。理念を作るのは社長と自分の二人、社員を巻き込むのは段階がある、これは経営補佐陣の役目だと思うから
という好永さんやり方に賛同したというのがあった。
異論や反論はあると思うが、実際の現場でこのことに苦労した会員経営者は多いと思う。
しかし、社長、役員だけで経営理念を作って従業員に浸透させることができるかは、ケースバイケースであり、作っただけになりかねないだろう。
昆布森にそれが可能なのは、好永さんが卓越した手腕と優れた言語能力によって、社員さんから信頼され結果も出してきているからであり、他社すべてにあてはまるものではない。
何より好永さんは教わったことをそのまま受け売りするのではなく、自分の頭で考え理解し自分なりのやり方を実行しているのが凄いことだと、私よりはるか年下の好永さんに畏敬の念を感じた。