「沖縄スパイ戦史」「返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す」

018-08-20 投稿

8月17日にシネマルナティックで見た映画2本について。

 

 

まずは「沖縄スパイ戦史」
第2次大戦末期の沖縄戦で正規軍の戦いとは別の北部でのゲリラ戦やスパイ戦などの「裏の戦争」に関して、
生き残った方々のインタビューを主にまとめたドキュメンタリー映画。
作戦に動員され故郷の山に籠って米兵を翻弄したのは、まだ10代の地元の少年たちで、
彼らを「護郷隊」として組織し、秘密戦のスキルを仕込んだのが、
日本軍のスパイ養成機関である「陸軍中野学校」出身の青年将校だった。
この映画は、他にも米軍が上陸せず空襲や戦闘による死者は一人もいなかったにも関わらず、
島民の三分の一にあたる約500名が軍名によって古くからマラリアの有病地帯として知られた西表島に強制移住させられたことによって、
命を落とした波照間島の悲劇(「戦争マラリア」と呼ばれている)についても描かれている。

この映画の特徴として、「残虐な日本兵」vs「悲惨な沖縄住民」といった「二項対立」的視点から描かれていないこと。
「護郷隊」には第一と第二の二つがあったが、第一護郷隊の村上隊長は戦後2か月間沖縄に滞在し、亡くなった隊員たちの、
家々を訪問し位牌に手を合わせた。
最初の慰霊祭を執り行い、「荒廃した戦跡を花で飾ろう」と考え桜の苗木千本の植樹を決めるなど、
生涯戦死した隊員を弔う姿勢を持ち続けた。
第二護郷隊の岩波隊長は、戦後故郷で建設会社の経営者になり、地域社会に貢献する仕事をしたが、
生涯叙勲などは受けなかった。
自民党嫌いであり、業界や地縁の関係で付き合うことはあっても、決して選挙の応援などは引き受けず、
そういう集まりにも出向かなかった。
「軍命に従うしかなかった者たちの罪を問うてはいけない」という論理をどう乗り越えるべきか、
これは見終わった後、私が感じたことだった。

もう一つ痛感したことは「軍隊は国(領土、領海、領空)は守るが、国民を守ることはない」ということだ。
特に島嶼戦争においては、住民は軍隊に土木工事や物資の搬入等でこきつかわれ、
口をふさがれ、最後は武器を持って戦う駒にされる。
侵入した敵に情報提供者になる可能性があるから、有病地帯に移住させて計画的に殺すなどということもする。

戦争には実に色々な側面があり、不条理で残酷なものだとあらためて感じさせる、いい映画であった。

 

 

もう一つは「返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す」
沖縄沖縄返還で外交交渉の最前線にいた実在の人物、「鬼の千葉なくして沖縄返還なし」と称された伝説の外交官千葉一夫氏を描いたドラマ。
戦後、外交官となった千葉は、本土から切り離され、アメリカの統治下にあった沖縄から核兵器を撤去させ、ベトナム戦争の出撃拠点としないよう、
アメリカと激しい外交交渉を重ねた。さらに何度も沖縄に足を運んでは、人々の苦悩に真摯に耳を傾けた。
しかし最後は立ちはだかる本土の思惑に追い詰められ、思わぬ結末を迎える。

山本薩男の映画を思い浮かべてもらえればよい。
非常に面白い社会派エンターテイメント映画である。
主演の井浦新は好演で妻役の戸田菜穂は美しい。

先ほど「軍隊は国民を守らない」と書いたが、千葉氏のような
「国ではなく国民に奉仕する」官僚がたくさんいれば、と思う。
しかし、巨大な権力に立ち向かっていくことの大変さ、苦しさ、
を思うと切なさを感じてしまうな。

今回の2つの映画を見てあらためて思ったこと、
現在の日本はアメリカの忠実な下僕であり、
それは沖縄というフィルターを通してより鮮明に見えてくる、
そのような種類のものであるということだ。