中小企業家同友会松山支部12月例会~月心グループ常務取締役の大政裕志さんの報告~

愛媛県中小企業家同友会の松山支部12月例会が松山市青少年センターであり、月心グループ常務取締役の大政裕志さんが
「時代を生き抜くための『四方よし』の精神とは~『共育ち』の人材育成こそが、会社の未来を創る鍵~」
と題した報告をされたので、思ったことなど書き連ねてみる。

1.三方よし「売り手よし、買い手よし、世間よし」とは近江商人の思想・行動哲学ではあるが、これは売り手(会社)が得をするだけでなく、買い手(お客様)をも満足しさせ、さらに商売を通じて世間(地域)の発展や福祉の増進に心配りをしなければならないとしたものだ。
大政さんはこれに「働き手」(社員)を加えて四方としたのだが、なぜ、昔は「働き手」が重視されなかったのだろうか?
「会社=社員」は一体化していたのか、それとも「滅私奉公」を当然のものとして受け入れていたのか?
このあたり詳しい人がいれば教えてほしいのだが。

2.家業を継ぐことは大政さんはあまり乗り気ではなく、前職の薬剤師の仕事にやりがいを感じていただけに、今の仕事の葬祭業を始めたころは、仕事のギャップに戸惑っていたばかりだという。
それが葬儀の担当者として初仕事で遺族の方々に感謝されたことが大きな転機となり、仕事にやりがいをかんじるようになったという。
何事につけても「仕事を通じてお客様に感謝される」ことこそ、どんな仕事にも共通する最大の喜びであることを
あらためて確認できた。

3.やる気になった大政さんが役員に就任直後、改革案を発表、しかし猛反対にあったそうである。
従業員は本来変化を嫌うもので、ここで「経営者と社員は立場が違うから分かりあうことは難しいのだ」
で終わってしまいそうだが、大政さんは違う。
「ことの本質は自分に対する社員たち不信感」にあり、「信頼関係の構築」こそが大切であると考えたのである。
会社を変えようとする場合、大切なことは制度や仕組みではない、良い「風土」や「土壌」を創っていくことが胆なのだ。
「風土」や「土壌」が変われば、制度や仕組みは自然とその会社に合わせた形でうまく回っていく。
私はそう思う。

4.現在は少しずつ大政さんの考えも社員に理解され始め、
社内に「広報」「5S」などの委員会もできてきたということだが、委員会では大政さんはなるべく意見を言わないようにしているという。
「社長が命令すると作業になる、自分たちが気づいてやってこそ仕事だ」と。
これからの会社は「教えてくれる」リーダーではなく、「気づかせてくれる」ファシリテーターこそが、会社の指導者に向いているのではないか。

5.中小企業家同友会は「共育」であり「教育」ではない。
社員を最も信頼するパートナーと考え、高い次元での信頼関係を目指し共に高めあうことを重視するものだ。
多くの経営者にとって従業員は「口を開けば、給料や休日のことで不満を言うしかない、前向きなことなど何も言わない、寄生虫」くらいに思っていないだろうか、
それは人間だから「仕事楽して、給料をたくさんもらいたいと考えるだろうが、多くの人は仕事に対しては「正当に評価されたい、仕事を通じて成長したい、会社に来ることが楽しくてしょうがない」こんな会社になることの方が、給料などの待遇面よりも上位にくるのではないか。
そんな社員達の幸福を第一に考えている社長こそ、社員から信頼されるのではないか。
大政さんは決して偉ぶらない、しかし明るいざっくばらんな方だ。
このような経営者こそ、これから訪れる人手不足社会で生き残っていけるのではないか。
この日の報告を聴き、その後のグループ討論を通じてその思いが強くなった