沖縄ヤクルト株式会社

 

平成29年10月16日~17日は「壺中の会 in 沖縄」で沖縄の「いい会社」のベンチマークツアーに参加した。
そのレポートを記しておく。まずは最初は、沖縄ヤクルト株式会社。
ヤクルト製品の販売会社で、この会社の特徴は我々が訪問する会社の多くは、オーナー企業若しくは同族会社で、トップダウンで物事を決定できればこそ、「人をたいせつにする経営」もできるわけだが、沖縄ヤクルト株式会社の入井社長は、ヤクルトの社員でサラリーマン社長である。

その入井社長が「人をたいせつにする経営」に開眼したきっかけはこのようなものだった。

沖縄に来る以前は、入井社長は「売上至上主義」であったそうだ。
その頃はマーケットの拡大期(高度成長期)であり営業力だけでモノが売れ、訪問回数を増やせば実績が向上した。
熱意と努力の精神追求で結果を出せた。
しかしバブル崩壊後マーケットが縮小し(少子高齢化)、多くの優秀な販売員が辞め、若手社員の退職が目立ち始めた。
売上至上主義の弊害が見え始めたのである。

そんな頃、入井社長は坂本教授の「日本でいちばん大切にしたい会社」を読んで衝撃を受けたそうだ。
続いてネッツトヨタ南国の横田会長のお話を聞いてさらに「人をたいせつにする経営」の素晴らしさを実感したそうである。

沖縄ヤクルト株式会社に社長として出向してきたとき、ここが自分の死に場所と思い、「人をたいせつにする経営」を実践した。
まず半年間に渡って社員一人一人と面接し、何を考え仕事をしているのか、何が問題かを徹底的に話し合った。
結果、「何に向かって仕事をしているのか共通のものがない」ことが分かったので、20名ほどで経営理念の作成プロジェクトを作り、沖縄ヤクルトの経営理念を作るようにした。

月一度の全体朝礼で、「売上至上主義」を辞めることを宣言し、
「新規開拓中心、買うところ探し、一方的な価値訴求」から「生涯顧客づくり、毎日飲用者づくり、困りごとの解決提案、口コミでお客さま拡大」に切り替えた。
ヤクルトレディーに「売上、売上」をいうのではなく、健康アドバイザーとしての知識を持つように意識を変えてもらった。

結果的に業績がダウンした。3年間は赤字は覚悟したが、4年目も赤字だったそうでこの時の入井社長の心労はいかばかりだったことか。
「お客様のために」ではなく「自分のために」仕事をしたヤクルトレディーは10人単位で辞めたが、多くの社員、ヤクルトレディーは「人をたいせつにする経営」で中々実績が出せず、本社の会議で非難を浴びつつ社員を擁護する入井社長の心意気に共感し、「絶対にこの社長に会社を辞めてもらいたくない」と思って、結束していったそうである。
その結果、5年目にトントンの成績、6年目に黒字、7年目に大きく業績がアップしたとのことだった。

2年前から全体朝礼は辞めたそうである。トップダウンだったから。
今は月1回全員が役職や年齢に関係なく意見がいえるオフサイトミーティングを実施しているという。

ヤクルトはインドネシアなどのアジア・中米あたりでは好調だそうだ。
反面、ヨーロッパなどでは苦戦しているようだが。
思うに我々は日本人は多くのことを明治以降欧米を師として学んできた。
これは経済・経営学に関しても同様なのだが、それとは別の道もあるのではないか。
「共感、親和性、助け合い」を重んじる経営があってもいいのでは思えた。

 

 

ベンチマーク終了後、ビーチで美しい夕日を堪能した後、
今回のツアーにも参加している沖縄在住の田中さんのアメリカ軍人将校の多く住むおしゃれな町中のお店「オーシャンズ」でステーキを食べて、2次会は沖縄の民謡酒場「まさかやあ~」へ直行。
ここの店主「ケン坊」が元アウトローで小指のない人なのだが、語りが個性的で楽しかった。
本土とは異なる沖縄の風土に触れ、大満足の一日目だった。