遊子漁協の「結の精神」

10月24日(火)の中小企業家同友会東温・今治・伊予松前三支部合同10月例会に参加した。
この日の報告者は、南予の遊子漁協の元婦人部長で、現在はスリーラインズ株式会社の代表取締役 山内満子さんの報告中々興味深い内容だった。
山内さんは元々普通の漁師のおかみさんであったが、何かのご縁で漁協の婦人部長になり、800万円もするキッチンカーを多くの反対を押し切って購入、1年間で300万円も売り上げるヒット事業に仕立て上げ、漁協を立て直した後、現在は家業を法人化して高収益の出る安定した漁業を目指している。
(キッチンカーをはじめとした遊子漁協の取り組みは高い評価を受け、農林大臣賞はじめ、7つも8つも賞をもらったという)

そんな山内さんの取り組みからいくつかポイントとなる点を自分なりに考えてみる。
@地方の振興には「若者、よそ者、馬鹿者」の存在が必要だとされるが、山内さんは、「世間様には耳を貸さない、自分のやりたいように進む」ことをモットーとしているようで、
確かにその通りだろう。前例を踏襲すれば、時代とともにさびれていくのが、今の地方なのだから。
しかし、出る杭は打たれるのが、田舎なのだがそれを明るく跳ね返して周囲を巻き込んでいった山内さんのパワーは大変なのものだが。
@キッチンカーで鯛めしとは逆のパターンの、ご飯の中に鯛を入れた「たべたい」、
家業を継いでくれた息子の名前をつけた「歌吉 鯛」、
などアイディア溢れる商品、ブランド化は大したもの。
スリーラインズ株式会社では、青のり養殖をはじめている。
これは海はどうあっても赤潮が出る恐れがあり、天然ものに比べると養殖だと洗う手間がない、
海老や蟹の混入がないため、アレルギー表示の必要がないなどの利点があるため。
@次々とアイディアを出し行動に移していくエネルギーの秘訣について尋ねると、とにかくネガティブなことを考えないこと、
ニュースをはじめ新聞、TVの情報はネガティブなものが多いので、だから新聞はほとんど読まない、TVもあまり見ない、
世間の情報はのことは新聞を読んでいる常識人の夫が教えてくれるのでということだった。
これには考えさせられた、多くの経営者の話では「新聞くらいは読まないといけない」と従業員にも教育し、
経営者も当然日経新聞くらいは目を通すことが常識くらいに考えていたのだが。
しかし、事業家は客観的な正しさを追求するものではなく、主観的であっても結果が成功であればよいのだろう、
考えすぎるよりは、「好きなこと、面白いこと」を追求するのも一つの手かもしれない。
私は自分の性癖から考えると、考えすぎてネガティブになるから事業者向きではないのだろうが。
@遊子漁協は昔から「結の精神」だと。
これは養殖のいかだは昔は1軒1台だと昔は決められていた。今は3台だが。
他の漁協は100台も持っているような漁協もある。
「結の精神」とは助け合いの精神、みんな平等という考え方がある。
これもはっとさせられた、バブル崩壊後、成果主義がもてはやされ、悪平等を非難する論調は強いが、本当にそれでみんなが幸せになれるのか。
今世界中で起こっているテロや戦争の主な要因は、持てる者と持たざる者との格差の拡大がもたらしたものではないのか、
下に合わせる悪平等主義は問題だが、「みんなで幸せになろう」という協調主義や同胞愛の方が、
結局みんなを幸せに導いてくれるのではないか。

数年前、遊子水が浦の段々畑を見に行ったことがあり、写真のような急角度で天までつらなる見事な石壁の段々畑に感動したが、
そこに行く途中の道々も地方の漁村にありがちな「荒れた」雰囲気がなく、きれいで活気があるように思えた。
そのころから、遊子漁協の快進撃は続いていたのだが、集落全体が清々しい印象だった。
また、いつか遊子を訪問したい、今度は山内さん一家の経営する漁師レストランで、美味しい魚料理を食べてみたいと思った。