遅くなったが、愛媛県中小企業家同友会松山支部第二地区の8月例会が19日(月)にあり、報告者は愛媛同友会代表理事のNPO法人家族支援フォーラムの米田理事長でした。私は座長でこの会に参加したが、米田さんの報告は多くの参加者にとって実に学びの多い素晴らしい内容でした。時間がないので中身を紹介できませんが、私の座長のまとめを転記しそれに変えることとします。
それでは、これより座長のまとめに入ります。
参加されている皆さんも色んな立場から多くの気付きや学びがあったと思いますが、私は主に3つの点を挙げてみようと思います。
まず一つは、「経営理念」の大切さ、「なぜ、自分はこの事業に携わっているのか」ということが明確になっているのか、このことの大切さです。米田さんには、自分の弟や同じような境遇の障がい者を一生隔離された施設できちんとした扱いもされないまま過ごさせたくない、といった使命感、「究極の自分事」を強く持っていました。倒産寸前の苦境の中でも決して事業を投げ出すことがなかったのは、強い思いからではなかったかと思います。昨年の広島青全交の記念講演の講師である株式会社八天堂の森光社長、八天堂は高級スイーツパンで有名な会社ですが、社長は講演の話の中で業態転換、商品の差別化、選択と集中、ローカルから全国へグローバルへの展開などといった戦略戦術の話に割いた時間は10分か15分くらいで後は、いかに経営理念が、「体が打ち震えるような経営理念」が大切かについて語っておられました。皆さんの中には「親から事業をついだ」「たまたま行きがかり上事業を行っている人もおられるかもしれません。それは構わないのですが「なぜ、何とために、この事業を行っているのか」をきちんと言語化し社員と共有している事、これが大切だと思います。
二番目に「答えは現場にあり」ということです。米田さんは以前は、何でもトップダウンで物事を決定し、それを社員に押し付けるといったやり方をとっていました。その方がスピード感があるし、社員の考えることなど所詮採るに足らないものだという考えが根底にあったからでしょう。しかし、倒産寸前まで追い込まれて米田さんは考えを改めます。現場に任せて一々指示をしない、時間がかかっても彼らに考えてもらい実行してもらう、それが結果間違っていてもそのことを責めることはしない、というやり方に変え、結果としてその方がはるかにうまく回っていきました。先月の7月例会でも報告いただいた宮崎本店の宮崎社長もおっしゃられたように「戦略は経営者が示さなければいけないが、戦術は社員が考えなければならない」ということです。現場の問題点や商品やサービスのアイディアは社員が一番わかっています。「社員に任せ、社員を信頼する」これに尽きると思います。
3つ目は経営理念の中に「社員を幸福にする」ことがうたわれていない会社はこの先、残っていくことができないのではないかと私は考えています。なぜなら、これからの人口減少時代には、経営者が社員を選別するのではなく、社員から選ばれる会社にならなければいけないということなのです。先ほど「経営者は社員を信頼しなければならない」と申し上げましたが逆も必要です。「社員から信頼される経営者にならないといけない」のです。どうすれば、社員から信頼される経営者になれるかということですが「経営者が心底から社員の幸せを願っているか」だと思います。よく「うちの社員はいくら給料を上げ待遇を改善してやっても少しもやる気を出さない、こっちは自分の報酬を削ってやっているのに」といった声を経営者から聞きます。しかし、そういった方々は社員の待遇の改善を業績を上げるための手段として行っていないでしょうか?それは単に社員を利用しているだけであり、そのような点は社員は敏感に見抜きます。給与の増額も福利厚生の充実も、社員の幸福を実現するための手段にすぎません。実現し追求すべきは経営者のロマンではなく、社員の幸福なのです。家族支援フォーラムは経営理念に「障がい者本人とその家族の豊かな暮らしと幸せ」とともに職員対する理念として「支援者の豊かな暮らしと幸せ」といった二本立ての理念があります。職員を幸せにするといった理念を明確化したことで米田さんは経営者として新たなステージに立ち、事業も回復させた、私はそう思います。
本日の米田さんの報告、皆さんはどのように聞かれたでしょうか。今日の例会が今後の皆さんの経営や仕事の取り組み方に際して、気づきや活力を少しでも与えてくれるものになったのでしたら、会を運営してきたメンバーにとって喜びに堪えません。
以上で拙い内容でしたが、座長のまとめを終わります。ご清聴ありがとうございました。