石坂産業プレゼンツ 特別プログラム 未来を見据えた、中小企業の経営戦略

12月1日に、「石坂産業プレゼンツ 特別プログラム 未来を見据えた、中小企業の経営戦略」に参加した。
石坂産業への訪問は、今年2回目だが今回は愛媛県中小企業家同友会の同士で若手経営者の(株)日の出都市開発の山本社長と同行した。
同じ産廃業の山本社長は今回のベンチマークの誘いに喜んで応じてくれ、私も彼のように業界に精通した方と一緒だと、理解の幅も広がるだろう、そんな思いもあり今回の訪問は楽しみだった。しかし、写真をあらためて見てみるに、石原社長は相変わらずの美しさ、女優と並んでも引けをとらないだろうな。

今回も廃棄物処理の現場、周囲の三富今昔村の案内、
石坂典子社長が石坂産業株式会社をどのように現在の形に変貌させていったといった講話の内容は、
前回7月の訪問時とダブるので今回は省略する。
私の前回のレポートを参考にしてもらいたい。
前回のテーマが「次世代リーダーを育てる人材活用マネジメント」で、今回が「未来を見据えた、中小企業の経営戦略」なので、そのあたりは内容が異なっていたので、
石坂社長の講演の内容と私の感じたことなど記しておきたい。

中小企業の経営戦略として石坂産業は次の3点がポイントだという。
1.意思決定のスピード
2.オリジナリティの創出
3.人材重視の経営

1.意思決定のスピードの例として、石坂産業が焼却事業から撤退して、リサイクル事業へ転換したことをあげた。
その時の社長は典子社長の父親であったが、地域住民から反対運動が巻き起こる中、何気なく言った娘の「いっそ、焼却をやめませんか?」という言葉に、2分ほどの沈黙の後、
「・・・地域に必要とされない仕事をしても仕方ないな」
売上の7割を占め、まだ、完成して5年ほどしかたってない焼却炉を僅かな時間でを捨てる決心をした、
その父親である先代社長の決断を石坂社長は驚きを持って語っていた。
これがサラリーマン社長がトップを占める大企業だとこうはいくまい、責任回避と先送り主義でいつまでたっても総論賛成各論反対でまとまらないだろう。
しかし、正しい判断をするためには、経営理念、確固たる哲学が必要なのではないか、それは何より先代社長が「地域に必要とされ、地域に愛される会社にしたい」という想いを強く持っているから、下せた決断であり、今も典子社長にしっかりと受け継がれている。

2.オリジナリティといえば、石坂産業くらいそれを発揮している企業もないだろう。
産廃会社には見えない産廃会社、年間6万人もの見学者を受け入れ、求人の応募総数が年間800人も来る会社、
しかし、それにはどうしても産廃会社にはマイナスイメージがつきまとうため、環境対策を全面に出してブランディングし、見せ方に大いに工夫をしているという側面もあるが、
やはり先代社長の夢、「いつかゴミを捨てる時代を終わりにして、リサイクルする時代にしなくてはいけない」
という想いが根底にあるから、正しい努力が正しい結果に結びついて、周囲に共感と感動を呼ぶのだろう。
これも、企業理念の大切さを裏付ける事例というべきだろう。

3.人材を重視しなければならないのは、大企業に比べ、規模と知名度に欠ける中小企業にとっては今さら言うまでもないだろう。
石坂産業も人材教育に時間を随分かけているそうである。
今は社員の一人一人をブランド化し、それぞれの強みをコンテンツ化していきたい、最初から何をやりたいか分かっている人を教育するのは簡単、そういう人を採りたい、
そうでない人は、教育が相当難しいとも言われた。
社長就任から10年間「整理、整頓、掃除をやろう」と言い続けた。
以前からの社員は分かっているが、新入社員は初めて聞く人もいる。
社長の役割はそれをしつこく言い続けることだと。

私が今回の訪問で驚いたのは、「私は今でも必死だ。いや、むしろ今が一番必死だ。」という石坂社長の言葉だった。
これほど業績も社員のモチベーションも高く、多くの経営者から目標とされる企業でありながらである。
当たり前のことではあるが、「過去の成功は未来の成功を意味するものではない」とも。
それは関東の一産廃企業から世界のグローバル環境企業へと変わっていく自社とその立場に多少戸惑っているのかなと思った。
「大成建設さんの重役の人を話したことがあるんですが、その人は5千人くらいまでは家族経営が出来ていたというんですよ。うちなんてまだ200人じゃないですか。まだまだ家族経営ができるんですよ。」と。

しかし、会社自体に色んな変化は生まれているそうで、
今年から新年会も忘年会も部門ごとに予算を入れてやってもらうようにした、一々社長が全部出ていたら、体が持たないので。
採用もアジア圏を中心に14か国からグローバル採用することにした。
若手の思考を入れ、かつグローバルな視点を入れて。

ただ、確かに売上1千億円の会社になれば国に物を言うことができる。
自分たちのやりたいことも、通しやすくなるだろう。
しかし、持続可能性という点から、それはいいことなのか。
先代は、決して会社の規模拡大を目指してはいなかった。
「いつかゴミを捨てる時代を終わりにして、リサイクルする時代にしなくてはいけない」
その思いを実現する会社を育てることに努力を傾注し続けてきた。
なら、私もその思いを受け継ぎたい、規模拡大を目的にはしない、成長よりも発展を目指したいとも言われた。
この思いがある限り、石坂産業は大丈夫だろうなと私は安心した。

社長の講話の後、敷地内でのカフェで美味しい料理とお酒で楽しいひと時、何社かの県外の方とも親しく会話できた。
石坂社長は例によって、参加者全員との名刺交換とあいさつ、
同行の山本社長とは同業者ということで、随分話も弾んでいて、山本社長も喜んでいた。
来年はさすがにこの地に来ることは私はないだろうが、何年か後にはグローバル企業として大きな変貌をこの会社は遂げているかもしれない、モンゴル帝国のチンギス・ハーンがモンゴル平原を平らげるのに50歳までかかったが、その後彼とその子孫が驚くほど短期間で、世界的な大帝国を築き上げたように。
などと願望を込めた未来を思い描きつつ、今夜もこちらでお土産に買ったシュトーレン(ドイツ由来の菓子)をワインを片手に味わっている。