随分と日が経ったのだが、2024年11月21日にジョープラで愛媛県中小企業家同友会松山支部11月例会での株式会社キャピタルコーポレーション代表取締役村井由香さんの「新化!深化!進化!~しなやかに事業に向き合う経営姿勢~」と題した報告は、自分にとって「経営って何だろう?」とあらためて感じさせる大変印象深いものだったので記しておこうと思う。
私が今回、新たな認識として持ったことを3つほどあげてみる
1. 女性経営者多くのタイプとして、明るく社交的で如才ない方とか、圧を感じる気の強そうな方が多いが、村井さんはふんわりおっとりした見た目で、失礼ながらあまりやり手経営者のように見えない。しかし、本業では焼き鳥専門店を広島市内に3店舗経営し、広島同友会では副代表理事、中同協女性部連絡会副代表でもあり、素晴らしい経営者なのである。人を見た目で判断してはいけない。
2. 村井さんは元々料理が嫌い、父親が2008年に他界したので仕方なく会社を継いだのだが、最初は嫌々ながらの社長業だったそうだ。それがのちに変化していくのだが、そのことは後述するとして、私は何ごとにおいても、まず仕事が好きになることが一番だと思っていたので、これもちょっとした驚きだった。
3. しかし、そんな村井さんが社長として行った打つ手打つ手はことごとく素晴らしいもので、要するに社員の仕事と経営者の仕事はかなり異なっているということなのである。
タイトルの一部である「新化」が村井さんに訪れたのは、2009年10月6日の事務所と店舗の焼失という一大惨事に見舞われたことによるという。これを機に会社をたたむ選択もあったのだが、
1. お客様からの店舗存続を願う後押しがあった
2. 社員の生活・自分の生活を背負っていかねばならない使命感に目覚めた
3. 巷では会社は1年も持たないだろうと噂され金融機関に行っても相手にされない、そんな自分がふがいなく思われ、何とか見返してやりたいと決意した
ここから今までのお飾りの社長から経営者へと脱皮した「新化」したということだ。
2010年に店舗を立て直し再建に向かおうとしたが、「経営とは?」ということで悩んでいたという。創業者の父親のようなワンマン経営のような真似はできない、そこで中小企業家同友会に入会し多くを学んだ村井さんの「深化」が始まる。当日のお話から印象に残った点を幾つかあげてみよう。
◎同友会に入会してはじめての経営指針書を作ったのだが、これが大失敗社員に全然響かない、そこでとにかく読みやすいものにしようと漫画っぽくし、吹き出しなども入れるようにした。(少し異なるがISOを取得しようとして、社員の勉強会を開こうとしたとき、居眠りする男性社員が続出したため、テキストを漫画にして講師を若い女性にしたという石坂産業の石坂社長のことを思い出した)
◎断捨離経営をした
これからの世の世代交替を考え、若い世代のお客さんをどう増やすか考えた。「郊外客」「団塊の世代」を捨て、女性でも来やすい店に変えた。他にも捨てたものと言えば、「不動産事業」「売上至上主義」「年功序列主義」などなど。このあたりは、元々料理は嫌いだったので、「プレイングマネージャー」にならない、経営に徹するという村井さんのポジションが良かったのかもしれない。大抵は現場に長くいた社長だったら、時代に合わないものでも愛着がわき中々捨てきれないものだが。
◎オフサイトミーティングを多く取り入れている
安心して言いたいことが言えて聞きあえる場を作っている。その場でネガティブトークが出ても、まずは聞く。後でポジティブトークに変えてみようと言う。
他にも色々あったのだが、とりあえず印象に残った箇所をピックアップしてみた。随分、どん欲に多くのことを吸収し、実践してるなという感じ。
そして、2020年のコロナ禍は大変なことだったが、それまでの経営指針書は破り捨てたというこのあたりも即断即決の村井さんらしい。ここから「進化」ということになったらしいが、従業員を休ませ雇用調整助成金をもらって息を潜めているよりも、「隣接異業種」に挑戦しようということにしたということだ。社員から「テイクアウトをしたい」「通信販売をしたい」といった提案が上がる中、事業を一つ一つ色分けしていった。その結果、多くの同友会会員企業と連携して新事業として実現したということだ。例えば冷凍生串は食品製造会社と、テイクアウトはタクシー会社とコラボしてという風に。
ここでも同友会でのつながりが生きたわけだが、村井さん曰く「恥ずかしがらずにビジョンを語ろう。そこには仲間がいるのだから」、しかし、人が恥ずかしがって語れないのは、笑われたりとか馬鹿にされたりといった点を恐れるからであって、心理的安全性がないと中々思ったことを口に出来ない。同友会はその点は「いい人」ばかりなので、話すことは容易だろう。自分もやりたいことをどんどん語っていこうとあらためて思った。
時代の変化を読み自社の強みを分析し、どのような会社にしたいのか考え、そのために果断に行動する、経営者とはこのようなものか、お手本のような方だった。そしてこの方も大きな試練に会わなければ、このような立派な経営者になることもなかっただろう。学び続けること、それを実践し続けることの大切さを今さらながら教えられた。マルブンでの懇親会でも村井さんと言葉を交わしたり、他の参加者とも交流したが実に楽しい時間だった。村井さん本当にありがとうございました。