広島青全交2日目、被爆体験とクリームパン

前日大いに盛り上がった広島青年経営者全国交流会二日目は、昨日の分科会のうち3つの分科会から座長報告。
皆、熱く語っていた。まあ、青全交らしいが。
その後は、「ヒロシマからのメッセージ~佐々木偵子さんと6年竹組の仲間たち~」
と題した川口登美子さん(かわの和み 代表)の特別報告。元広島同友会の代表理事でもあられた。
3歳で被爆した川口さんは小学校で佐々木偵子さんとクラスメートになり親友となる。
中学校に進学する頃、偵子さんは白血病を発症し、折り鶴を折りながら回復を願うも短い生涯を終えた。
川口さんら6年竹組のクラスメートが中心となり、日本中の子供たちに募金を募って原爆の子の像を建立した。
川口さんは現在、自らの被爆体験、親友であった佐々木偵子さんと原爆の子の像のことを小中学生を中心に語り部として活動している。
川口さん自身の被爆体験、被爆した兄の無残な死、佐々木偵子さんとクラスメートになり運動会のリレーで毎日バトンを渡す練習をし、優勝したこと。
小学校を卒業してもずっと仲よくしよういうことで6年竹組で「団結の会」を作ったこと、
ある日佐々木さんの親が学校に来て偵子さんを連れ帰り、白血病であったことをクラスメートは知らされたこと、
病院に見舞いに行って日に日に弱っていく偵子さん、そして訪れた死、かつてのクラスメートたちはどうしてもその死を受け入れることが出来ず、原爆の子の像の建立を思い立ち、
全国校長会などにお願いして寄付を募ったことなど。
自身の体験を淡々と語る川口さんだが、それで十分だ。
余分な脚色はいらない、80歳に手が届こうという川口さんだが少しも弱々しい感じがしない。
これから戦争体験者がますます減っていく中で、このようなお話が聞けたのは貴重な機会であった。
その後の記念講演は、「人生、今日がはじまり~逆境こそ自ら成長し、(糧となり)企業を変革するチャンス~」
と題して、株式会社八天堂 代表取締役森光孝雄氏の1時間10分に渡るお話。
広島青全交のガイドブックの講演概要を抜粋すると
「祖父の代から続く和菓子・洋菓子店を受け継ぎ、1991年、26歳の時にパン屋を開業。順調に売上を伸ばし、
県内に13店舗を出店。しかし、無理な拡大から人も離れていき倒産の危機に。どん底の中で気づいたのは「他責になっていた自分」。パン卸売りへ業態転換し、危機を乗り越える。
2008年、それまで100種類製造していたパンを1種類に絞り、とろけるようなくちどけの冷やして食べる
「くりーむパン」を1年半かけて開発。東京へ進出し、爆発的なヒットとなり、スイーツパンの手土産市場を確立。
さらに、2014年から海外にも展開中。
「人づくり」を最も大切にしながら、体験型食のテーマパークなどの新たなビジネスモデルを展開、農業・福祉領域の課題解決にも取り組む森光氏の理念と実践から学びます。」
ぱっと見には、業態転換、商品の差別化、選択と集中、ローカルから全国へグローバルへの展開、
体験型食のテーマパークの開園というあらたなビジネスモデルの展開、などが注目されそうだが、
森光社長のこの講演で話したことの大半は、経営理念や使命感の大切さであり、
自分がそのことに気づかされるまでの苦闘し続けた人生体験で、
様々なビジネス展開の話はせいぜい10~15分程度であった。
森光さんは、上記の講演概要のようにパン屋開業から最初の1店目は良かったが間もなく、経営的には大赤字になり、
スタッフは次々と離職し、希望が見えない状態になったという。
自分などいない方がいいと思いだし、夜になると毎晩幻聴が聞こえだす始末、
妻からは頼むから病院へ行ってくれと言われたそうである。
そんな八方ふさがりの中、関東でパン屋をしていた実弟が2千万円を貸してくれた。
その時思った、このお金は弟が将来自分が独立して店舗を出す際の資金にしようと思ってコツコツと貯めていたお金のはずだ、
ダメな経営をしている兄に差し出す義理などないはずだが、そんな心遣いをしてくれる弟のような人間を自分の親は育ててきたのだ、
自分は親のような立派な教育は到底してこなかった。
森光さんのご両親のお店は1店舗10人くらいのお店で、森光さん自身は事業の規模は大きい方がいい、
両親のことは見下げていた。
確かに経営には夢とロマンがある、しかし、間違った経営をしていると大勢の人を不幸にする、
夢と志の違いは、夢 → 個人(利己)、 志 → 公(利他) 。
自分に向いている夢は、利害が一致している時は人も聞いてくれるが、
そのうち人はきびすを返して去っていく。
森光社長は親の前で号泣し、今までの自分の不徳を詫び、倒産寸前の会社の再生を誓った。
その後の森光社長と八天堂の事業展開については会社のHPでみれば詳細はわかるであろうから割愛する。
講演の中で私が印象に残った点をピックアップしてみると、
◎中小企業は差別化する商品・サービスがないといけない、
なかったら作らないといけない、
心が震えるような「想い」がないとそれは作れない。
そんな強い「想い」は、逆境に遭遇してこそ生まれる。
「事を成すは逆境にあり、事を破るは順境にあり」
「絶え間なく悩みがある」それが経営者にとっては当たり前であり、
「人間力」を磨く好機となる。
◎中小企業はただでさえ人が来ない、
店を出すから採用ではいけない、それは「採用」ではなく「補充」だ、
長期計画を立てて時間をかけて育てる、
「時間がない、金がない」は、経営者は言ってはいけない。
◎社是は「品性資本の三方よしの経営」
経営理念は良い品 良い人 良い会社つくり」
経営方針は「理念経営 高付加価値経営 有事の経営」
信条(クレド)は
「八天堂は社員のために お品はお客様のために 利益は未来のために」
八天堂の目指す『食のイノベーションを通した人づくりの会社』とは、食のイノベーションという手段を通し、社員の成長による人づくりの実現を目的としている。
『あなと出会えてよかった』と一人でも多くの人に言ってもらえるような、お品、人、会社へと成長していきます。
私も愛媛に帰ってからさっそく看板商品であるクリームパンの詰め合わせをネットで注文したが、
まだ、配送日予定の連絡がないな。
この講演で全国からの同友会会員の注文がひっきりなしなのかもしれないが。
この二日間、分科会、特別報告、基調講演、全て素晴らしい内容だった。
2年後の愛媛で開催される「全研」も中々大変だなと予感しつつ、
いいものにしなければと実行委員でもないのに思った。