サイボウズ松山オフィス久保氏の講演

2025627日(金)松山市の一番町ホールにて、GCC四国の勉強会が行われたのでこの時のことをレポート。講師はサイボウズ株式会社松山オフィスの地域DXディレクター 久保正明氏。

愛媛県人にとって松山が創業の地のサイボウズと社長の青野慶久氏は郷土の誇りであり、立志伝中の人物ではあるが、県外の人には知らない人いるかもしれないので、簡単に説明しておくと、199788日に設立したグループウェアの開発、販売、運用しているIT会社であり、202412月期連結:売上 29,675百万円、経常利益 5,335百万円、従業員は1,321名(202412月末 連結)、日本は東京本社の他にも札幌、横浜、名古屋、松山、福岡、那覇にオフィスを構え、海外にも中国、タイ、ベトナム、USA、オーストラリア、マレーシアにも連結子会社を置くという堂々たる大企業である。

人本経営と急成長の新進上場IT企業というのは、少し意外な取り合わせと思われるかもしれないが、以前サイボウズの社長である青野慶久氏は人本経営のカリスマである伊那食品工業の塚越寛会長の元に教えを乞いに伊那市まで訪ねたことがあり、その時の対談の模様は「「いい会社」ってどんな会社ですか?社員の幸せについて語り合おう」(日経BP社)という書籍にまとめられている。

新興ITベンチャーの会社といえば、夜ごと六本木ヒルズでモデルやタレントの女の子と一緒にパーティーを開いて株価をいかに上昇させるかに力を入れ、社員や関連企業の幸せなど二の次といったイメージがあるが、サイボウズに関してはそのようなイメージと異なり人本経営と親和性の高い「いい会社」のようで、しかし、私はそのあたり詳しくは知らなかったので、久保氏のお話は楽しみだった。

 

サイボウズ株式会社は多くのアワードを受賞しているだけあって、社員が気持ちよく働いてくれる様々な取り組みを行っており、また、そういった取り組みの裏側にある企業理念と言ったことを久保氏から話していただいた。

ランダムに列挙してみる。

 

◎ITベンチャー企業の例に漏れず当初はサイボウズも寝ずに働くのが当たり前という会社だった。当然離職率は高く2005年には28パーセントにまでなった。さすがにこれでは人材投資コストが無駄になるということで、青野社長は大いに反省し、社員の希望を聞き、定時や短時間の勤務を可能にし、副業を認めたりした。その結果、離職率も下がり会社の雰囲気も良くなった。働く人をハッピーにしていけば、業績もついてくると青野社長は思えるようになった。

 

◎サイボウズの企業理念は存在意義(Purposeと、存在意義の基盤となる5つの文化(Culture)で構成されている。存在意義(Purpose)は、「チームワーク溢れる社会を創る」、5つの文化は「1.理想への共感」「2.多様な個性を重視」「3.公明正大」「4.自主自律」「5.対話と議論」ということだそうだ。

ポイントは多様性、“100100通りのマッチングを目指しているという。例えば9時から1時間だけ在宅勤務をして10時から出勤という勤務時間で働く社員もいる。子供の保育園への送り迎えのためか。育児と言えば青野社長自身が育休を取得したことが、当時マスコミに取り上げられたが、それをきっかけに男性社員も育休を取得する社員が増えたし、対外的なイメージも良くなった。

 

◎サイボウズの人事制度の方針としては、「ツール」「制度」「風土」の3つを揃えることが必要で中でも最も大切なものが「風土」だという。社員同士の信頼感がないと「ツール」と「制度」があってもダメだと。このあたりは、北九州の「バグジー」の久保社長も言っていたし、多くの人本経営企業も同じだと思った。

 

◎「働き方マッチング」ということで、時間や場所の選択を柔軟にする制度もある。大雪や台風やコロナ禍など。理想は世界やどこにいても仕事ができるを実現したい。これからの働く世代はリモートワークを希望している。意外だがテレワーカーの方が会社への忠誠心が高いという結果が出ているという。ただし、サイボウズはリアルも大事だと思っている。合宿もしたりする。

 

◎副業も届け出さなくていい。社外の人には「サイボウズは何でもありか?」とも言われる。「よくそれで社員を管理できますね?」とも。別に社員を管理などしていない。ポイントは驚くほどオープンな情報共有ということだろうか。毎週の経営会議の議事録もその日のうちに全社員に共有される。情報格差は権力格差とつながってしまうとかんじているから。

 

大体、このような内容だっただろうか。人本経営企業はこじんまりした小さな会社が多く、サイボウズさんのような大手企業の人本経営的な取り組みを聞かせていただいたのは、大変有益な機会だった。

ただ、時代のスピードが上がり会社の規模拡大するにつれ、今までにはなかった問題点も生じており「多様性とわがままの違いをどこで線引きするのか」といったことも思案することがあるということだ。

参加者の一部の方と勉強会終了後に懇親会を行ったが、初回からずっと参加していてくれている方から、「この会は参加すると必ず新しい学びがある」と言っていただき、これからも良い企画をしなければとあらためて思った。