小林先生のシェアード・バリュー・コーポレーション株式会社主催の「壺中100年の会in愛媛・香川」と題したいい会社をベンチマークする機会が4月24日、25日とあり、
私も参加してきたので、ベンチマーク先各社のレポートをあげてみようと思う。
まずは、1社目の訪問先、愛媛県東温市の「ウインテック株式会社」、私はかつて平成26年5月に訪問したことがあり、
かれこれ9年ぶりの再訪である。
メンテナンスフリーで壊れない、操作性が高くセッティング時間も短縮できる、などの理由から圧倒的な国内シェアを誇る。
社員20名ほどの規模ながら、自己資本比率は極めて高く無借金経営である。
この企業については、見学後の感想でベンチマーク参加者の中から一般的な人本経営企業と共通な点と異なる点があったとの指摘があったので、共通点と相違点を列挙しつつ、私の考察を述べてみよう。
多くの人本経営企業との共通点
1.高い技術力を持ち中小企業ならではのニッチな分野でのトップを目指している。
駄場元社長は目指すところは石鎚山や富士山ではなくエベレストだと。
蛇行修正装置では国内シェアの80パーセントという圧倒的なシェアを占めている。
2.協力会社は大切にする。値切らない。
協力会社とはwin-win会を作って月1回の勉強会をしている。
ウインテックの仕事は面倒だが、儲かると協力会社からは言われいている。
3.社員は家族のように大事にする。
以前、客先で理不尽な扱いを受けて社員が苦しんでいたので、社員ともども駄場元社長はその客先に乗り込んで、
「お宅との取引は全て止める、機械は全部引き上げる」と啖呵を切って、舐め切った態度をとっていた相手は大いに慌てたという。
帰りの車中で社員は感極まって泣いていた。
一番大切なのは社員であって、お客様ではないという、明解な哲学を社長は持っている。
相違点
1.多くの人本経営の社長は、親しみやすく普通の人っぽい人が多い。
駄場元社長は、我々見学者と接している時は、にこやかな笑みを浮かべているが、
ふとした瞬間、眼光が鋭く75歳とは思えないきりりとしたに威圧感、威厳をたたえた雰囲気を醸し出す。
リーダーは怖れられなければならないという駄場元社長の考えということだが、
かつてのヤクルト、阪神、楽天などのプロ野球球団で監督を務めた野村さんも
「監督は怖がられるのはいいが、馬鹿にされたら終いだ」といった監督像だったがそれに似ている。
今となっては少し古いタイプに思えるが。
2.多くの人本経営企業が新卒採用、
「人間力重視」な人事制度をとっている中、
新卒はとらない、中途採用、給料体制も一部成果主義的なところも取り入れている。
3.多くの人本経営の経営者が若い世代に価値観・考え方に理解を示す中、ゆとり世代に否定的だ。
新卒採用しないのも、彼らの価値観を気に入ってないから。
上記の相違点だけみると、古い世代の頑固おやじ的な印象だが、
私は世の中の変化というものは一足飛びに訪れるものではなく、
一部変化しつつ従来の特色も残しながら徐々に変わっていくもので、ウインテックさんのようなあり方も良しだと思う。
上記相違点1であげた野村さんは茶髪や髭は認めず選手には厳しく接していたが、
若い世代に嫌われていただろうか?
今のプロ野球界のコーチ・監督は野村監督の教育を受けた面々が相当多いではないか。
実際、社長の講話の後で社内見学をさせていただいたが、社員さんたちは明るく生きいきと仕事をしているように見受けられた。
ホスピタリティー溢れる女性事務員たちのお見送りで会社を後にした。
山間地の緑豊かな社屋の周辺が伊那食品工業に似ているなといった感想を抱き、人本経営にも色々な形があるなと考えさせられた訪問だった。