「壺中100年の会in兵庫・豊岡」株式会社ユラク
10月8日の夕方に城崎温泉に到着、ここは大学のサークルの卒業旅行で随分昔に訪れたことがあり、その時はひなびた温泉街といった印象だったのだが、今は若者や外国人に人気のおしゃれな観光地に変貌している。宿泊は株式会社ユラク経営の旅館「湯楽」で人本経営的やりかたで業績を伸ばしている旅館である。
株式会社ユラクの設立は1973年5月1日、老舗という感じではない。従業員は社員、パートも併せて105名、宿泊・外食・海産物販売・EC事業・ギフト・雑貨小売事業などを手掛けている。現在の伊藤清範社長は祖父、父から受け継いだ三代目だ。
その夜の夕食はこちらでいただいたが、味も接客サービスも素晴らしいものだった。翌日、午前中に伊藤社長に講話していただいたが、様々な制度や手法は、まさに「人を大切にする企業」のお手本のようなしっかりしたものだった。
詳しく書くスペースはないので、当日の伊藤社長のお話から私が印象に残った個所ランダムに抜き出してみる。
◎伊藤社長は大学卒業後、すぐ家業に入ったが当時はトップダウン経営で現場のモチベーションが低かった、高齢者中心の職場はお客様の悪口、社員同士の悪口、派閥もあり、離職理由の多くは人間関係だった。入社後10年たち社長に就任して当時の会社の方針である「お客様第一主義」を「社員第一主義」へと変えた。企業理念も「社員・仲間の喜びと幸せの追求」「会社の安定と持続可能な発展の追求」「お客様の満足と幸福の追求」に刷新した。
◎接客業は女性中心の職場なので、女性に活躍してもらわないといけない。役員を除いた役職者の比率は女性が56パーセント、湯楽の料理長は40代の女性、副支配人は50代の女性だ。産休・育休の取得率は100パーセント、新卒を定期採用することで、結婚・子育て世代の穴を埋めてくれる。朝夜は若手社員が勤務し(宿泊客対応)、日中は子育て世代(昼食・仕込み)が勤務することで、仕事の役割分担をしている。
◎都会から田舎に来て働いてもらうのは大変で、採用コンセプトは「学生目線の採用活動」選ぶのではなく、選んでもらえる「おもてなし採用活動」、入社1,2年目の若手に面接させ気に入った人を採用してくれと言ってある、最終面接は役員がするが、まずそれで落とされることはない。若手も学生の前で喋らないといけないので、会社のことを勉強するので会社に対する理解が深まる。9月18日に観光地見学、10月1日に内定式をして事前に職場や周囲の環境を理解してもらうようにしているので4月1日に入社しても違和感がない。新入社員一人に対して1名専任の先輩がついてマンツーマンで育成する。独り立ちした後も1年間はメンターとしてサポートする。
◎評価制度は1年かかって社員が作った。評価することが目的ではなく、人が成長することが目的の人事制度である。誰もが努力すればS評価が獲れるようにしているので、やりがい、モチベーションがアップする。年3回の評価結果による上司とのフォローアップ面談を行い、自己評価と上司評価のすり合わせを行い、合わせて目標課題の確認をする。
◎研修費用は全て会社負担、勤務時間内に行う。接客業は半年もすると現場作業は覚えてしまうのであとは人柄とチームワークがすべて。心の教育いわば道徳をみっちり教える。日本では学校教育で道徳が削られているから。おけいこ講座(英会話、華道、茶道、着付け)も行っている。他に入社1か月間は社会人としての基礎を教える。給与明細の項目の説明、税金や社会保険も説明する。銀行や税理士や社労士に来てもらう。給料の手取り金額がなぜそのような額になっているかを知らないと会社に不信感を抱いてしますの。
他にも色々な取り組みをされていたが、長くなるので省略する。同社は毎年200ページの長い「経営計画書」を発表しているそうだが、これをコンサルやセミナーに頼らず自身の手で作り上げていると聞き、どんでもない頭のいい方だなと思った。
8日の夕食後と9日早朝、城崎の街を外湯を巡りながらぶらぶら散策してみたが、レトロな街並みの中にしゃれた女性客の好みそうな店も新設されていたりして中々活気に満ちていた。今のシーズンはお客さんのほとんどが海外からのお客さんだということで、時代の流れを感じつつ、多少複雑な思いにかられた。











